歴史的なパンデミック(世界的大流行)となってしまった新型コロナウイルスの感染拡大。この感染が顕在化してから既に半年以上が経ちましたが、未だに強い影響を社会に及ぼし続けています。世界経済も当然ながら大きな影響を受けていて、現在も五里霧中といった状況が続いています。
経済活動を再開するヨーロッパと感染悪化の南米、北米
まずは、そんな世界経済の現状を見て行きましょう。ヨーロッパ諸国の新型コロナ感染者数は、ようやく減少傾向となりました。死亡者の多かったイタリア、スペインもこの現状を受けて、主要産業である観光業の再開に向けた準備を始めています。イタリアは既に主要3都市で国際便の発着が開始。国境の封鎖も解除されています。スペインも7月1日より海外からの旅行者を受け入れることを発表しています。
南米はヨーロッパとは対照的に、現在感染が拡大中です。特にブラジル、ペルー、チリの状況が悪く、その中でもブラジルは感染者数累計が世界2位となり、感染増加に歯止めが利かない状況です。北米においては、カナダは落ち着きを見せ始めていますが、世界でもっとも感染者数の多い米国は、差別問題に対するデモの激化により、人と人との接触機会が増加しています。そのため、今後第2波が来る可能性が示唆されています。このように、南北アメリカ大陸では現在も深刻な状況が続き、経済活動平常化への道筋は見えていません。
アジア諸国の状況
我らが日本も含めた、アジア諸国の感染状況と、経済活動再開へ向けた動きはどうなっているのでしょうか。日本はご存じの通り全国的に感染者が減少。通常の経済活動を取り戻しつつあります。またアジア最大の経済規模を持ち、この新型コロナの震源地であった中国も、発表されている数字上は、全体としての抑え込みには成功しているようです。その他多くのアジアの国々が、新型コロナの封じ込めに成功している中、現在インドの感染者数が増加の一途を辿っています。インド経済は世界6位の規模を持っているため、このまま感染拡大が続くと世界経済へも大きな影響を及ぼすことになりかねない状況です。
新型コロナの株式市場への影響
新型コロナウイルスは世界中に蔓延し、世界経済に大きな影響を与えました。それはつまり世界の株式市場にも大きな影響を及ぼしたことを意味し、実際に3月中旬に起きた新型コロナの影響による株式市場の急落は、ブラックマンデーやリーマンショックに匹敵するものでした。しかし、過去の暴落後と同様、今回も株式市場は急落後に反発。ダウ平均、日経平均株価など世界の主要な株式市場は、現在急落前2月頃の水準に戻っています。ただ現在の株価は実体経済と乖離しているため「コロナバブル」と考える専門家も多く、油断のできない状況が続いています。
また、いったん落ち着いたVIX指数が再び急伸しています。これは投資家の恐怖心理が根深く残っていることを意味し、ちょっとしたネガティブ要素で株価が大きく振れる可能性を示唆しています。そのため、しばらくは神経質な相場が世界的に続くことになるでしょう。
アジアの株式市場
現在世界中の株式市場が、ネガティブ要素に過敏に反応する状況で、それはアジア市場も変わりません。アジア経済全体の指標となる日経アジア300指数は、いったん上昇傾向を見せていましたが、新型コロナ第2波への懸念から急落した米国株式相場に呼応し、6月に入り下落傾向が続いています。またアジア経済を牽引すべき日本、中国が、どちらも振るわない状況です。日本は政府の経済対策への失望、中国は2次感染や香港の問題があり、投資家に安心感を与えることができていないからです。
この数か月間に見られた興味深いことの1つは、カジノや賭けなどの従来のギャンブルがアジアで新しいギャンブラーを獲得していることです。同時に、株式と通貨取引の両方で、新しいオンライントレーダーが減少しています。
為替相場について
最後に為替相場についても少し触れましょう。2月後半以降激しく値動きした為替相場ですが、現在表面上は落ち着きを取り戻しています。しかし、今後の不透明感は解消されておらず、以下の要素次第では、大きく状況が変わることになるでしょう。
- 新型コロナ第2波
- 原油価格
- 金利上昇のタイミング
世界的に金融緩和が行われている現在、キャリートレードの減少は否めません。安定通貨であるドル、円と新興国通貨とのペアが、為替取引の中心となっていくことでしょう。11月の米国大統領選挙までは、相場の不透明感が払拭される可能性は低いでしょう。