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第80回<スタグフレーション

 

2008年は、波乱の幕開けとなりました。まずドル/円が、108円台と2007年11月下旬以来の円高水準となりました。また日経平均株価は前日比616円安と大発会としては過去最大の下げ幅を記録。さらに原油相場は1バレル=100ドルを突破し、史上最高値を更新して、金などの商品相場も軒並み高値をつけることとなったのです。

こうした乱が起きた背景には、米経済への減速懸念があります。なかでも関係者が恐れているのが、米国のスタグフレーションです。この経済用語は、先月、グリーンスパン前FRB議長が、「米国にはスタグフレーションの初期兆候がみられる」と発言したことから、いまや俄然「旬の言葉」になった感があります。
そこで今回は、このスタグフレーションについて解説したいと思います。

スタグフレーションとは、景気の停滞を表す「スタグネーション(Stagnation)」と物価の高騰を表す「インフレーション(Inflation)」の合成語です。つまり、景気後退と物価上昇が同時に起こる現象がスタグフレーションだというわけです。
一般的に、景気拡大局面では、需要が増大しますので、物価は上昇する傾向があります。一方、景気が後退しはじめると、需要の減少にともない、物価は下落傾向をたどるのが通例です。
しかし最近は、景気減速の兆候がありながら、物価は上昇基調にあるといういびつな状態が続いています。その主な原因は、原油価格の高騰です。原油高は、ガソリンや灯油などの石油製品はもちろん、原材料費や輸送費などのコスト高を招きます。企業としては、製品価格を上げて、コストを取り戻したいところです。しかし、むやみに製品価格にそのまま転嫁することが出来ればよいのですが、景気が思わしくない中で、それを行うのは売上の激減を招きかねないので、企業にとっては命取りとなりかねません。そこで、多くの場合、そのしわ寄せは従業員の人件費に向けられます。企業が、原材料費や輸送費で上がったコストを人件費の抑制で調節しようとするからです。しかし人件費が削られると、国民の大多数を占める勤労世帯の消費を減退させますので、結局、製品が売れなくなってしまい、更なる不景気を惹起するという悪循環に陥りやすくなるのです。

また、通例、インフレ懸念が浮上すると、金融当局は政策金利を上げて景気の過熱感を抑制し、物価を抑えようとしますが、スタグフレーション下では、景気が後退局面にあるので、闇雲に金利を上げることはできません。結果、金融当局は非常に難しい金融政策の舵取りを迫られることになり、そのことがさらに市場への不安を増幅させることにもつながるのです。

来週(15日、16日)には、PPI(生産者物価指数)やCPI(消費者物価指数)など、米国の物価に関する指標の発表が予定されています。一般的には、これらの指数が上昇すると、利上げ期待につながり、ドルが買われやすくなる傾向があります。しかし今回は、スタグフレーション懸念から、必ずしもそのようなシナリオは描きにくい状況にあると言わければなりません。

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